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subhead9

小沼

ところで、この写真集は
イタリアのSKIRA(スキラ)社からの出版なんですね。
アメリカあたりでも販売されているんですか?

𠮷竹

それが、アメリカとカナダでは販売できないんです。
SKIRAの提携出版社がニューヨークにあるので
「アメリカでも出せるんだ!」と喜んだんですが・・・・・・。
Amazonでは買えますが、
店頭売りは難しいということになったようです。

小沼

理由は言ってました?

𠮷竹

出版社の人に、
「『ARAB』というタイトルがまずいんですか?」
と訊いたんです。
まぁ、まずいと言われても
変えるつもりはなかったんですけど、
タイトル以前に内容だと言われました。
中東を扱っているものは
アメリカやカナダではとにかくダメなんだと。

小沼

うーん、そうですか・・・。

𠮷竹

すごく悔しいです。

小沼

やっぱりヨーロッパのほうは
イスラム圏と距離的に近いことがとても大きいですよね。
教育がすごくちゃんとしてると思うんですよ。

これ、ずいぶん昔にフランスで買ったものなんです。
『アラビア語で書いて遊ぼう』という本。

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小沼

2人の子どもが自己紹介をしてるんです。
「ぼくはイドリスという名前で、
モロッコのカサブランカに住んでる」、
「ぼくはラティーファ。
アラブ首長国連邦のドバイに住んでる」って。
このあたりでまずは、
アラビアというのはすごく遠いイメージがあるけど
話は通じるんだな、ということがわかる。
でもアラビア語って本当はこっちから読むんじゃないよ、
いったん本を閉じて反対側から開いてね、という
メッセージがあるわけね。
で、いったん閉じて反対から開くと・・・・・・。

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小沼

さっきは「Bonjour!(こんにちは!)」で
始まっていたのが、
「Rebonjour!(再びこんにちは!)」で始まって、
アラビア語とフランス語の対応表というのかな、
そういうのが出てきて。

𠮷竹

おもしろいですねぇ。

小沼

このシリーズ、漢字カナのもあるらしいんですけど、
こういう発想がヨーロッパにはあるんですよね。

𠮷竹

これはフランスの人が作ったんですか?

小沼

ええ。ネイティヴの人も一緒なんでしょうけど。

𠮷竹

少し前に『バベルの学校』という映画を観たんですね。
あれを観て、フランスには本当にいろいろな国から
いろいろな事情の人が来ているんだなぁと知りましたし、
フランスはそういった、
異文化に門戸を開いている国なんだと
改めて思いましたね。

小沼

こんな本もあるんです。
アラビア語版の『星の王子様』。

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𠮷竹

あぁ!

小沼

これもフランスで買ったものです。
「キツネ」って出てくるでしょ? 
でもキツネなのに、耳の大きさが知っているのと違っていて、
おかしいなぁと思ってたんですね、昔から。
そうしたらあるとき、
これはフェネックという沙漠にいるキツネだとわかって。
それがわかったときに、あぁ、なるほどと思ったわけ。
つまりサン=テクジュペリが
飛行機に乗って仕事をしていたのは、
アフリカの沙漠なんですね。
だからフェネックがいるし、
水や井戸がどうのという話が出てくる。
そういうふうに読んでいくと、
フランス人のサン=テクジュペリが書いた小説として
知ったつもりになっていたのが、
また違うものに感じられるんです。

𠮷竹

なるほど・・・。
家にあるので読み直してみます。

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小沼

ところで、ベドウィンの家族とは
今も連絡が取れているんですか?

𠮷竹

取れていないんです。
携帯電話を持っているはずの人に連絡しても
電話のオーナーが変わったりしていて。
彼らの冬の拠点は、
IS(Islamic State/イスラミックステート)の拠点の
真下なんですね。
それでちょっと心配なんです。

小沼

シリアから出国している可能性もある?

𠮷竹

そうですね・・・・・・万が一、
彼らが親戚のいるサウジに移るとしても、
それは自分たちの生活の糧である羊を
捨てることになるはずで、
たぶんそれはないと思うんです。
沙漠を知らない人は沙漠に入らないと思うので、
沙漠にいるからこそ大丈夫と信じてはいるんですけどね。

小沼

そっか・・・。

𠮷竹

ただ、兵役義務はあるので、
何人かは必ず兵隊に行ってます。
亡くなってる人がいてもおかしくないです。
シリアの紛争が始まって、もう4年半なんですよね。
悲しみ苦しみ、がれきの家々、
たくさん報道されています。
それらは現状を知る上でとても大切なことです。
ですが、ああいう写真や映像って見慣れちゃうものだと
わたしは思うんですよ。
とても悲しいことですが、
事実、だんだんあたりまえになってきてる。
だからそうじゃなくて、わたしは、
平和で、笑顔にあふれ、思いやりにあふれ、
心温かいシリアを伝えたいんです。
こんなに素晴らしくて、こんなに美しい国だからこそ
争いをやめてほしい。
そういうアプローチをしていきたいんですよね。
平和で美しいシリアを知る者として。

小沼

ええ、よくわかります。

𠮷竹

それからやっぱりすごく伝えたいのは、
アラブというと、危ないとかテロだとか、
いつもどこかで争いがあるという
イメージを持つ人が多いと思うんですけども、
今シリアで起きている事態は
シリア人にとっても非日常なんです。
シリア人もわたしたちと同じように
あたりまえの生活をしている。
家庭生活があって、学校があって、
友人との付き合いがあって、
ごく普通の暮らしを送っているんですね。
今の状況は非日常。
そこをわかってほしい。
中東だから危ないのはあたりまえというわけでは
まったくないので。

小沼

状況が落ち着いたら、また行きたいですか?

𠮷竹

もちろんです。

小沼

沙漠欠乏症にならないうちにね。

𠮷竹

ええ(笑)。
はじめて彼らと会って写真を撮り始めたのが1995年。
2011年でいったん終わっているので、
まだ17年間しか撮っていないんですね。
わたし、17年って
17歳の子どものようなものだと思っているんです。
20年撮ってやっと成人、やっと大人。
だから最低20年は撮りたい。
20年撮って、そこからまた新たな、
大人としての目線で撮っていきたい。
まずは3年分を埋めたいですし、
シリアは第二の故郷なので、早く沙漠に帰りたい。
ベドウィンの家族に早く会いたいです。

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焚火を囲んでの家族の団らん。一日も早く、再びこの輪の中に・・・。
2011年撮影。(C)Megumi Yoshitake

<連載はこれで終了です!>

infomation.


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