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小沼

𠮷竹さんは1995年にこの家族と出会ってから、
何回くらい滞在されているんですか?

𠮷竹

えーと、何回くらいでしょう? 
期間でいうと、2011年までほとんど毎年通ってました。
途中、妊娠出産で2年、あいだが空いちゃったんですけど。
最初のころは独身だったんですね。
その時点で彼らにとっては
すでにとうがたっている年齢だったので、
「なぜあなたは結婚しないのか」と
さんざん言われましたねぇ(苦笑)。

小沼

なるほど(笑)。

𠮷竹

そのあと結婚して。
主人に「シリアはいいよ、行こうよ、行こうよ」と言い続け、
新婚旅行はベドウィン家族に会いに行ったんです。
そうしたら「よくぞ結婚してくれた! 
よくぞ旦那さんを連れてきてくれた!」と大喜びしてくれて。
わたしの子どもも、
1歳4カ月のときにはじめて連れていきました。
これまたすごく喜んでくれて。
5歳になってからは、息子と2人で毎年行ってます。

小沼

𠮷竹さんがシリアに通っていることについて、
おつれあいは、なにか思ったり、
考えたりしているようでした?

𠮷竹

彼はそれまでシリアやアラブというものとは
まったくかかわりのない人生を歩いていたんですけど、
「ああでこうで、いいところだよ」という
わたしの説明を聞いて実際に行ってみたら、
アラブのこともベドウィンの家族のことも
大好きになったんですね。
なので、自分が体験してからは
ネガティブなイメージは一切なくなったようです。
仕事や旅費の都合さえつけば毎年でも行きたいみたいですし。

小沼

そもそも、どういういきさつで知り合われたんですか?
・・・って、ヘンなこと聞いちゃってますけど(笑)。

𠮷竹

主人は1987年に一緒にシリアに行った男子学生の
友だちなんです。

小沼

あぁ、それだったらわりとスムーズかもしれませんね。
どういったところで人とつながりができるかって、
すごく重要だと思うんです。
たとえば縁があって知り合っても、
「アラブに通ってます」なんて言うと、
それだけで既成概念とか先入観のせいで
ちょっと引くような人もいるだろうし、
興味は持っても、
「じゃあ一緒に行こう」となるかというと
なかなか難しいかもしれません。
偏見とかじゃなくても、
ちょっと自分には無理だな・・・とか。
ちょっとしたことだとは思うんだけど。

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𠮷竹

考えてみればそうですよね。
よく行ってくれたと思います。
まわりの人はみんな、
「𠮷竹が引きずって連れていったんだろう」と
言うんですけど(笑)。
でも、食べるものも合ったみたいで、
主人はシリアに行くと必ず太るんですよ。

小沼

さすが、食いだおれの町を擁する国だけある。

𠮷竹

ええ(笑)。

小沼

ちょっと話が飛びますが、
仕事で『スターウォーズ』の原稿を書かなくちゃいけなくて、
つい最近、全部観直したんですね。
そうしたら、やっぱり沙漠が多いんですよね、あの映画。
辺境としての沙漠。
で、やっぱりラクダに類する生きものが出てきたり、
水を生成する家族がいたり。
あの映画の舞台設定というのかな、
モデルになっているのは、
やはり現実の沙漠みたいなものなんだろうなと
改めて思ったんです。

𠮷竹

なるほど・・・。
沙漠はたとえば砂嵐なんかも吹くわけですが、
シリア沙漠は嵐の前にこんな感じになったりもするんですよ。

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砂嵐前の異様な空。
2004年撮影。(C)Megumi Yoshitake

小沼

すごい色ですねぇ。
世界の終わりかと思っちゃう。

𠮷竹

これ、フィルターは一切使ってないんです。
本当にこんな色になって。
このあと、ざーっと雨が降って、やんだんです。
春はこういう黄砂みたいなものが起きるんですね。
今年の春にドバイに行ったときも
やはり黄色い砂嵐になって。
この写真のときは30分~1時間で終わったんですけど、
ドバイでは収まるまでに8時間くらいかかりました。

小沼

長いですね。

𠮷竹

すぐに終わるかと思ったら、なかなか終わらなくて。

小沼

そのドバイは、お仕事で?

𠮷竹

いえ、旅行です。

小沼

そのときも沙漠に行かれたんですか?

𠮷竹

はい。
ドバイとアブダビに行ったんですけど、
アブダビの砂漠のど真ん中にホテルがあるんですよ。
以前から憧れていて、いつか行きたいと思ってたんです。
4年も沙漠に行ってないし。

小沼

沙漠欠乏症になった(笑)。

𠮷竹

そうなんです(苦笑)。
アブダビの空港から2時間半くらい砂漠に入って、
サウジアラビアとの国境近くに「空白の大地」といわれる
世界最大のルブアルハリ砂漠があるんですね。
そのど真ん中に建っているホテルです。

小沼

期待どおりでした?

𠮷竹

良かったですよ!
本当になにもなくて(笑)。
部屋の窓をあけると目の前が砂漠なんです。

(註:「砂漠/沙漠」の表記について本連載では「沙漠」で統一していますが、
土があり草も生えるシリア沙漠と区別するため、
アブダビの砂漠に関するコメントの一部を「砂漠」と表記しています。)

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𠮷竹

周辺の湾岸地域をはじめ全世界から観光客が訪ねてくるので、
いつもほぼ満室みたいですね。

小沼

𠮷竹さんは仕事でもそういう場所に行くことが多いですか?
沙漠でなくとも、アラブ方面だとか辺境だとか。

𠮷竹

・・・とはかぎりませんが、
旅行雑誌の仕事などでちょこちょこ行ったりはします。
でも昔に比べると「写真を撮る」という仕事自体が
激減してますね。
最近はちょっとした写真は編集者やライターが撮りますし。
いろいろなところに行っては
ドキュメンタリー的なものを撮って、
週刊誌などに載せてもらったりもしていたんですが、
そういう仕事も昨年あたりから少なくなりました。
たとえば、中国のある村で撮った写真を持ち込んだときには、
「今、これを載せる意味はあるだろうか」と。
そういったものより、
日本の美しい風景やグルメ情報のほうが売れるので・・・
というお話でしたね。

小沼

わたしも写真家の方々と少しは付き合いがありますけど、
みなさん、やっぱりいろいろなところに出かけるんです。
で、普通の旅行ではなかなか行かないようなところの
異文化だとかを、
写真を通して見せてくれる。
我々はそういった写真や記事を見て、
「こんなところがあるんだ!」とか
「こういう人たちがいるんだ!」と思ったりする。
そういう記事がごく一般的な雑誌に載っていることの意義は
大きいと思うんですけどね。
最近耳にした話では、テレビの洋画番組がなくなって
外国の映画や文化への興味や知識がかなり減ったということが
言われていたんですね。
だとすると、
『アラビアのロレンス』で沙漠に惹かれるというきっかけも
持てないかもしれない・・・・・・。

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シリア沙漠の春は短いけれど、とても美しい。
雨が多い年には、こんなふうに青々と緑で覆われる場所がある。
1996年撮影。(C)Megumi Yoshitake

𠮷竹

そう思います。
それに最近は海外で本物を見ても感動しない・・・という
別の問題も増えている気がするんですね。
テレビやインターネットでさんざん見てる、
それも3Dだとか4Kだとかで、画質もきれい。
もちろん行きたくても行けない人にとっては
素晴らしいことだと思うんですけど、
やっぱりテレビやネットで見るのと
実際に行ったり見たりするのとでは、
においも音も色も・・・・・・つまり
「体験」がまったく違うと思うんです。
食べものだってね、
テレビで見ていても美味しさはわからないじゃないですか。
ぜひ、いつの日かシリアに出かけて、
いろいろ味わってほしいですね。
本当になんでも美味しいので(笑)。

<次回に続きます>


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