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subhead6

小沼

沙漠で、水はどうするんですか?

𠮷竹

基本的には水がたくさんある地域に定期的に取りにいって、
大きなタンクに貯水します。
もしくは井戸水を採りに行きます。

小沼

草が生えたり花が咲いたりはしても、
やっぱり乾燥してるんですよね?

𠮷竹

乾燥してますね。
真っ赤なポピーも咲きますが、短い春の間だけ。
冬はすごく寒いし、雪もみぞれも降る。
逆に夏は日照時間が長くて暑い。
夏はけっこうつらいですねぇ。

小沼

お風呂は?

𠮷竹

簡易的なシャワールームがあるんですね。
お湯を張ったたらいと石けん、シャンプーが置いてあって、
夏は毎日、汗を流して髪を洗います。
日本のように身体をゴシゴシ洗うような入浴はしないです。
乾燥しているので、
しっかり洗わなくてもにおわないんだと思います。
ただ、わたしは最初の年にシラミが出ちゃいまして・・・・・・。

小沼

あらま。

𠮷竹

一応、髪はちょこちょこ洗うんですが、
あまり洗った感じがしないんですね。
日本の「洗った感」の2~3割。
で、1カ月くらいを過ぎたころにシラミが出て・・・・・・。
わたしの汚れた服を見て、あるおかあさんが
「あなたもこれでアラブになったね!」って
背中をバンバンたたいてくれたんです。
それはすごくうれしかったんです。
でも髪にシラミが出た時はショックでした(苦笑)。

小沼

むしろシラミが出ないと
イニシエーションが通らないとか(笑)。

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𠮷竹

いやぁ、かなり衝撃的でしたよ!

小沼

洗濯は? 服はすぐに汚れますよね。

𠮷竹

汚れますねー。
天気のいい日に、たらいにお湯を張って洗ってます。
洗い終わったら、家を張るロープに引っかけて天日干し。

小沼

歯は磨きますか?

𠮷竹

あんまり。

小沼

なんとなくそう思ってました。

𠮷竹

彼らが移動しているエリアの水に
歯を黄ばませる成分が入っているらしく、
周辺の人たちはみんな歯が一様にちょっと黄色いんです。

小沼

𠮷竹さんは沙漠で体調を崩したことはなかったですか? 
お腹をこわしたりとか。

𠮷竹

最初の年はありました。
2年目からはまったく大丈夫なんですけど。

小沼

そういうのって、慣れるものですか?

𠮷竹

だと思うんですよ。
わたしの子どもも何度も連れて行ってるんですが、
お腹をこわしたのは最初の年だけ。
翌年からは生水を飲んでも大丈夫になりましたから。

小沼

そっかぁ。

𠮷竹

ラクダのミルクで強烈にお腹をこわしたことがあるんです。
ラクダのミルクって、水に色がついたような
サラッとした感じで、昔からよく、
「水がなくてもラクダが一頭いれば沙漠を乗りきれる」
と言われてるんですね。
最初の年に「美味しいから飲んでごらん」と言われて
飲んでみたら本当に美味しくて、
ゴクゴク飲み干したんです。
そうしたら夜中に強烈な腹痛が起きまして。
そういえば「最初の年は洗礼を受ける」って
なにかの本に書いてあったなぁと(苦笑)。

小沼

あああ・・・・・・。

𠮷竹

お腹が痛くてトイレに行ったんです。
トイレといっても、沙漠ではいわゆる「どこでもトイレ」。
で、番犬がお尻をかみにやってくる。
それで最初の年は、お世話担当の少女が
ついてきてくれることになっていたんですけど、
夜中に起こすのはさすがに申し訳なかったので
一人で行ったんですね。
犬よけの石を持って・・・。
その日はとってもきれいな月夜だったんです。
そんな中で、わたしは片手に石を持ち、
もう一方の手にはティッシュを持って
腹痛にうなりながらしゃがみ込んでいる(苦笑)。
遠くでは「うぉ~~~ん!」という犬の遠吠え。
忘れもしないです。

・・・この彼女がわたしのお世話をしてくれてました。
今はサウジアラビアにお嫁に行ってしまったんですけど。

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めぐみさんのお世話担当だったファウザン。
1995年撮影。(C)Megumi Yoshitake

小沼

この当時で何歳くらいですか?

𠮷竹

15歳だったと思います。

小沼

日本の感覚で見ると、みんな大人っぽいですよね。

𠮷竹

そうなんですよ。
精神的にも大人だし、
皮膚など肉体的にはちょっと老けてもいます。
手だけの写真を載せていますけど、
顔は若くても手はしわがすごいんですね。
沙漠で乾燥しているのと、
彼らは本当によく働きますから。
でも、わたしはその手をとっても美しいと思うんです。
彼ら自身の人生が表れているように思えて。

小沼

ええ。

𠮷竹

それと身体のことでいうと、
年配の女性は関節を悪くする人が多いですね。
子どもをたくさん産むからだと思うんですが。

小沼

骨粗鬆症なんでしょうか。
だから羊のミルクがどうしても必要だったりするのかな。
カルシウムを補う意味で。

𠮷竹

そうかもしれません。
あとは砂を吸うので、男女問わず、
肺の病気を患う人が多いです。

・・・えーと、この写真は学校に行くところですね。

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小沼

道に迷うことはないんですよね?

𠮷竹

不思議なんですよ。
どうして迷わないのか。

小沼

あはは(笑)。

𠮷竹

夜に真っ暗な中を車で帰ってくるときも、
ピタッと自分の家の前に着くんですよねぇ。
不思議なんです。
車の轍みたいなものも見あたらないのに。

小沼

学校には男女とも行くんですか?

𠮷竹

女の子は家の仕事が多いので行く時間がないですね。
炊事洗濯、裁縫はもちろん、
子どもたちの面倒をみたり、
燃料用の羊やラクダの糞を採りに行ったり。
座る間もなく働いてます。
ただ、学校については、
男の子も歩ける範囲の場所に遊牧したときしか
行かないですね。
学校まで5~6kmだったら歩けますけど、
10kmを超えるような場合は
おそらく行っていないのではと思います。

小沼

ベドウィンが移動しているエリアと最寄りの街とは、
どのくらいの距離があるものなんですか?

𠮷竹

彼らがよく行く街からは車で2時間。
距離でいうと直線で100kmくらいのあたりを
移動しているようです。
実はベドウィンも定住の家を持っているんですね。
先ほど触れた定住化政策の一環として、
政府から支給されているんです。
その家に住めば近くには学校もあります。
でも、そこに住んでしまうと羊の放牧ができないし、
彼らはやっぱり好きじゃないんですよね、
壁に囲まれた家が。

小沼

そういったシリアの都市部の政治に、
ベドウィンの人たちはけっこう影響されているんですか?

𠮷竹

ほとんど影響はないですね。
彼らは自分たちのことをベドウィンと呼びませんが、
シリア人とも言わないんです。
自分たちのことは一貫して「アラブ」。
国への帰属意識は薄いです。

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𠮷竹

わたしが彼らに会いに行くときは、
パルミラで情報を集めるんですね。
ベドウィンは住所を持たないので、
彼らが今どのあたりにいるのかを知っている人を探して、
親戚や知り合いが街に来ているときは、
その人たちに家族のところまで連れていってもらい、
そうじゃないときは
沙漠まで行けるタクシーの運転手さんに運んでもらうんです。

小沼

つまり、いつも突然訪ねるわけですね。

𠮷竹

そうですね。
シリアはもともと都市部にも
住所がつけられていないんですが、
ベドウィンの場合はどこにいるかが
まったくわからないですから。
政府が数年前に携帯電話の基地局をたくさん
作ったんですけど、
最初のころは都市部しかつながらなかったので、
事前に連絡することが不可能だったんです。
ただ、最後に行った2011年は
沙漠のど真ん中からメールを送ることができて
感動しました(笑)。

小沼

手紙で「いついつ行きます」みたいなことは?

𠮷竹

彼らはあまり字を読めないかと。
それに住所がないので、
郵便局に私書箱を持っていないと手紙も着かないんです。

小沼

あぁ、そうか・・・。
「今年はちゃんと会えるだろうか?」って
不安になったりしないもんですか?

𠮷竹

それが全然ないんですよ。
不思議なくらい。

<次回に続きます>


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